富田 宇宙

1989年熊本県生まれ。宇宙飛行士を目指して九州の名門、濟々黌高に進学するも、16歳のときに、失明に至る難病、網膜色素変性症が発覚する。大学、社会人と徐々に視力を失いながら、スポーツでも仕事でも、それまでと同様に健常者の中で人並み以上の成果を出そうと努力を続けた。しかし、障がいがなければ簡単にできることに何倍もの労力をかけなければならない生活を続けるうちに、社会における障がい者の生きづらさを痛感。「乗り越える」のでなく、障がいを「強み(濃い特徴)」ととらえる生き方ができないものかと考えるようになっていく。

メーカー系のソフトウェアエンジニアだった2013年、パラリンピック東京大会の招致が決定。障がい者理解が遅れている日本での開催に、大会が成功しない可能性が懸念されている事実を知り、大会に出場して貢献すべくパラ競泳を開始した。2015年に水泳連盟の強化選手に選出されると会社を退職。パラアスリートとして競技に専念できる環境を整え、多様性理解や共生社会実現を推進する活動を始める。

更なる競技力の向上とパラリンピックムーブメント推進のための研究の必要性を感じ、2017年に体育大の大学院へ進学。体系的なパラスポーツの知識を習得するとともに、大幅に記録を更新していく。2021年、東京2020大会でパラリンピックに初出場、400m自由形及び100mバタフライで銀メダル、200m個人メドレーで銅メダルを獲得した。

大会後、練習拠点をパラ水泳の強豪国であるスペインに移し、バルセロナの障がい者水泳チーム B-Swimで活動。海外生活を通して日本の在り方を客観的にとらえ、社会をよりよくしていくためのオープンコミュニケーションやマインドセットについて提唱しつつ、持続可能なモチベーションを維持してパフォーマンスを発揮するためのライフスキルの重要性を伝える活動に注力している。

2022年には元来の夢であった宇宙への挑戦も再開。日本人の視覚障がい者として初の無重力飛行実験を実施するなど、宇宙におけるインクルーシブデザインの推進にも寄与する。

2024年、自身2度目のパラリンピックとなるパリ大会の出場が内定、金メダル獲得を目指している。

富田 宇宙
Uchu Tomita(Ply)
EY Japan所属 パラアスリート

生年月日1989.02.28
性別男性
出生地熊本県
所属EY Japan
競技種目競泳(自由形、バタフライ、個人メドレー)、ブラインドダンス

専門・コンテンツ

  • DE&I(Diversity,Equity&Inclusiveness)、障がい者理解、人権教育
  • コーチング学、パラスポーツ概論、スポーツウェルネス
  • Wellbeing、フローマインド、ライフスキル講演
  • インクルーシブデザイン、宇宙ビジネス、アクセシビリティコンサルティング

パラアスリートが体現するメッセージ

障がい者であるパラアスリートには少なからず”できない”ことがあります。ですが私たちは、それを周囲に忘れさせてしまうほど、いきいきと生きています。なぜそんなことができるのでしょうか。それは、”できない””嫌な”ことにとらわれずに”できる””好きな”ことに目を向け、日々挑戦し成長することを大切に生きているからです。

パラスポーツは細分化されたカテゴリー内の競争です。私は水泳選手ですが北島康介さんのように泳ぐことはできません。ボーダレスに考えるなら、あくまで”目が見えない割には泳げる”にすぎないのです。以前の私は数字や結果ばかりに重きを置き、できる他人とできない自分を比べて追い込んでいました。でもそれではいくら成果を出しても賞賛されても、苦しいままで、いつも心が疲れていました。それがパラスポーツに出会って、それぞれの成長にフォーカスしそれぞれの目標に向かっていくことこそが人生の質を向上させ、能力を引き出すために必要であると身をもって学んだのです。

「すべての人が最大限の力を発揮するには、相対的な結果を評価するよりも、自分らしく成長できたかを重視することが重要である」これは、変化が激しく努力と結果が結びつきにくい現代においてすべての人に欠かせない思考法であり、教育先進国で非認知教育として重要視されている考え方と重なります。私はこの考え方をパラアスリートとして体現しながら、生きづらさを感じる人が増えている日本でも広めていきたいと思っています。

多様性理解はDoingよりもBeing

マイノリティへの理解について語られるとき、「~という言葉は使ってはいけません」や「~な人には~してはいけません」といった、ガイドラインのような話を耳にすることがあります。知識も確かに必要ですが、果たしてこれだけで”バリアを取り除く”ことに繋がるのでしょうか。その話を聞いた人々は、「~をしないようにしよう」というNGをたくさんインプットし、当事者との遭遇に備えることになるでしょう。ですが、実際のところ近しいマイノリティ性のある人であっても、考え方は千差万別です。ガイドライン通りに行動しても、ある人にはよくてもある人には失礼、ということが数限りなく起こってしまいます。

だからこそ、私は”どうするか”よりも”どう在るか”が重要ではないかと考えています。いつでもだれに対しても、想像力と余裕を持って、笑顔で優しく接することができる自分で在ること。それができれば、仮に無知から失礼な行動をとってしまったとしても、相手を深く傷つけることはないはずです。そして逆に当事者側の立場であったときにも、動じずにさらっと相手を許すことができるのです。

このようなしなやかな心理状態を応用スポーツ心理学では”フローマインド”と呼びます。私は自分の障がいや競技と向き合うための多くの学びとトレーニングを通じて、このマインドセットにたどり着きました。常に自然体でベストパフォーマンスな自分に近づいていくにつれ、アスリートだけでなくあらゆる人とこのスキルを共有していきたいという思いが強くなっています。

行動解決型から思考解決型へ。限りないDoingの場合分けを暗記するのではなく、健全なBeingを維持できる自分になることによって、真の多様性理解は築かれます。ぜひ一緒にトレーニングしていきましょう。

連載

【音声付き】パラスイマー 宇宙の視点https://kumanichi.com/series/ucyus_viewpoint

インタビュー

【動画】武井壮 VS 期待のエース 富田宇宙選手 真剣勝負! – スポーツナビ「武井壮のパラスポーツ真剣勝負」https://sports.yahoo.co.jp/video/player/1875940
メダリスト記者会見ライブ配信 水泳 木村 敬一選手 富田 宇宙選手 – YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=-zp1AGBj9_Y
多士講座(二部)トークセッション 九州・熊本から宇宙に羽ばたけ! – YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=YLZv9DXCLuw
【パリ五輪】「ワクワクと覚悟」 パラ水泳の富田宇宙選手が意気込みを語る – YouTubehttps://www.youtube.com/watch?v=QYF_EKuPvOI

経歴

2007年3月熊本県立濟々黌高等学校卒
2012年3月日本大学文理学部情報システム解析学科卒
2012年4月キヤノンソフトウェア株式会社
2015年9月EYアドバイザリー株式会社(現 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社) 現職
2019年3月日本体育大学大学院体育科学研究科博士前期課程修了
2022年3月日本体育大学大学院体育科学研究科博士後期課程単位取得

表彰

2013年度東京都 都知事賞(職業技能 パソコン操作)
2017年度日本身体障がい者水泳連盟 優秀選手賞
2018年度神奈川県 スポーツ優秀選手表彰
横浜市 優秀選手表彰
熊本県 スポーツ功労者表彰
熊本市 スポーツ奨励彰
日本大学文理学部校友会 会長賞
日本身体障がい者水泳連盟 優秀選手賞
2019年度文部科学省 国際競技大会優秀者表彰
神奈川県 スポーツ優秀選手表彰
横浜市 スポーツ功労者表彰
熊本県 スポーツ功労者表彰
熊本市 スポーツ奨励彰
日本大学文理学部校友会 会長賞
日本身体障がい者水泳連盟 優秀選手賞
2021年度文部科学省 スポーツ功労者表彰
東京都 東京都スポーツ大賞
板橋区 区民文化特別賞
神奈川県 スポーツ優秀選手表彰
横浜市 スポーツ栄誉彰
日本体育大学 理事長表彰
熊本県 くまもと夢づくり賞
熊本県 スポーツ優秀賞
熊本市 スポーツ特別功労者表彰
熊本日日新聞社 熊日スポーツ賞特別賞
日本大学文理学部校友会 スポーツ栄誉賞
日本パラ水泳連盟 優秀選手賞
2022年度文部科学省 国際競技大会優秀者表彰
日本プロスポーツ協会 日本プロスポーツ大賞敢闘賞
熊本県 スポーツ優秀彰
熊本市 スポーツ奨励彰
熊本日日新聞社 熊日スポーツ賞奨励賞
日本大学文理学部校友会 会長賞
日本パラ水泳連盟 優秀選手賞
2023年度文部科学省 国際競技大会優秀者表彰
熊本県 スポーツ優秀彰
熊本市 スポーツ奨励彰
熊本日日新聞社 熊日スポーツ賞奨励賞
日本大学文理学部校友会 会長賞
日本パラ水泳連盟 優秀選手賞

MEDIA

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